「自衛隊を辞めたい」と思ったあなたへ――転職先を探す前に考えてほしいこと

「自衛隊を辞めたい」と思ったあなたへ――転職先を探す前に考えてほしいこと

この記事の要点

自衛隊を辞めたいと思ったとき、「民間で通用するのか」「転職先はあるのか」と不安になるのは当然です。私もそうでした。でも今振り返ると、それより先に考えるべきことがありました。

自分にとって何が一番大事なのか。そして、どんな人生だけは絶対に送りたくないのか。

少なくとも30代から40代前半くらいまでの大卒幹部なら、マインドセットを切り替え、自衛隊の常識を必要に応じてアンラーニングできれば、転職は案外どうにかなります。だからこそ、焦って最初に決まった会社へ飛び込む必要もありません。

この記事では、元自衛官の私自身が辞める前に悩んだことと、実際に民間へ出てから気づいたことをもとに、「辞めるか、残るか」を決める前に一度考えてほしいことを書きます。

※この記事について
かなり私自身の経験と、転職後に知り合った元自衛官の体験に依っています。そのため、転職については大卒のBU幹部を主に想定しています。一方で、転職後のマインドセットやアンラーニングは、定年退職する方も含めて全自衛官に共通する話です。また、「辞める」という決断を先延ばしにしないほうがいい場合については、自衛官に限らず当てはまるところがあると思います。この記事が目に留まったなら、ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです。

「転職できるか」ではなく、「辞められない理由」を探していた

自衛隊を辞めたいと思ったとき、私が最初に考えたのは「民間で通用するだろうか」でした。無職になったらどうしよう。転職に失敗して、今より給料も安く、激務で家族との時間も取れない。そんな悲惨なことになったらどうしよう……。そんなことばかり調べていました。

今振り返ると、当時の私は「転職できるか」を調べていたというより、実は辞められない理由を探していたのだと思います。

民間で通用するかは、二番目の問題だった

転職できるのか。年収はどうなるのか。自衛隊しか知らない自分に何ができるのか。もちろん、転職活動ではそれを突き詰めて考える必要があります。でも、その前に考えたほうがいいことがあります。

自分は何を一番大事にしたいのか。そして、どんな人生だけは絶対に送りたくないのか。

具体的には、家族との時間を守りたいのか。収入を落としたくないのか。仕事の面白さが欲しいのか。転勤生活から離れたいのか。心身をすり減らす働き方だけは二度としたくないのか。

全部を満たす仕事は、たぶんありません。だからこそ、ここを曖昧にしたまま転職サイトに登録して色々な求人を眺めても、年収や会社名に引っ張られるだけです。転職エージェントを使う場合も同じで、先に自分の軸がないと、紹介された求人の中から選ぶだけになりがちです。自衛官が転職エージェントをどう使えばいいのかは、実際に使って感じた「任せていいこと・いけないこと」とあわせて別の記事で書いています。転職エージェントを使う場合も同じで、先に自分の軸がないと、紹介された求人の中から選ぶだけになりがちです。自衛官が転職エージェントをどう使えばいいのかは、実際に使って感じた「任せていいこと・いけないこと」とあわせて別の記事で書いています。

逆に、考えた末に「自衛隊に残るのが一番いい」となるなら、それでいいと思います。

自衛隊の中で、自分でも予想だにしなかった場所で活躍して、輝きを取り戻していく。そんな人は、私が見た限りでは珍しくありません。組織が大きいから、色々な場所があります。まだ自分に合った場所に巡り合っていないだけ、ということも本当に多いです。

そして、本気で探し始めたら案外見つかります。

ただし、組織そのものが嫌になったなら話は別

ただ、これはまだ合理的に考えて、自衛隊にいることを許容できる場合の話です。

本気で自衛隊に絶望したなら、話は別です。

「たまたま上司が悪かっただけ」「次の異動先なら変わる」「これから処遇も改善される」。自衛隊に残る理屈としては正しいかもしれません。

でも、パワハラなり何なりで心身を削られ、「この組織は自分を守ってくれない」となれば、いくら理屈で分かっていても苦しみは減りません。

組織そのものに絶望してしまえば、そこに所属していること自体が苦痛になってしまいます。そんな状態で「自衛隊にもいいところはある」「不確実な転職より、数年我慢して別のところに異動すればいい」と考えても、根っこのところにある痛みまで消えてくれるわけではありません。

苦痛まみれの人生を何年も続けるくらいなら、別の道を探してほしい。私はそう思います。

転職は、案外どうにかなる

では、肝心の「民間で通用するか」なのですが……。

少なくとも30代から40代前半くらいまでの大卒幹部なら、必要以上に悲観しなくていいと思います。

もちろん、自衛隊の常識をそのまま持ち込めば苦労します。アンラーニングは必要です。ただ、人を動かす、計画を立てる、関係者を調整する、トラブルに対応する、責任を負う。厳しい環境でそういう経験を積んできた人には、民間でも価値のある仕事の姿勢、調整力、計画力が身についています。アンラーニングして、マインドセットも新しい環境に適応させ、自衛隊で培った能力を奮えば、だいたいの人は転職後もうまくやっていけます。

例えば私は結局そちらには進みませんでしたが、施工管理なんて陸自幹部との相性が抜群だと思います。防衛関連のビジネスも、外から想像するよりずっと裾野が広い。

だから、「自衛隊を辞めたら食べていけない」と思って、そこで人生の選択肢を閉じる必要はありません。むしろ気をつけてほしいのは逆です。

辞めると決めた途端、今度は「早く転職先を決めなければ」という焦りが出ます。そこで最初に内定が出た会社に飛び込まないこと。自分が何を大事にしたかったのか、何を避けたかったのかを忘れないでください。

そして、まだ自衛隊にいるのであれば、焦って転職先を探すだけでなく、今のうちにできる準備もあります。私自身、転職してから「資格より先に、これをやっておけばよかった」と感じたことがいくつもありました。自衛隊を辞める前に身につけておけばよかったスキルについては、別の記事でまとめています。

そして、まだ自衛隊にいるのであれば、焦って転職先を探すだけでなく、今のうちにできる準備もあります。私自身、転職してから「資格より先に、これをやっておけばよかった」と感じたことがいくつもありました。自衛隊を辞める前に身につけておけばよかったスキルについては、別の記事でまとめています。

職場への遠慮も、残る人への軽蔑もいらない

もう一つ。「自分が辞めたら部隊が大変になる」と考える必要もありません。あなたがいなくても回ります。そんなもんです。

私が辞めたあとも当然のように仕事は続きました。次の人が来て、その人なりに仕事をして、それが新しい日常になります。それは冷たい話ではなく、組織とは本来そういうものです。

また、自分が辞めると決めたからといって、残る人を見下すのもやめたほうがいい。「なんであんな環境に残るんだ」「まともな人から辞めていく」。自衛隊が嫌になると、そんなことを考えたくなることがあります。

でも、そんな思考、いいこと一つもないです。

辞めることも、残ることも、それ自体が正解ではありません。

 

最後に

あの頃の私は、民間で通用するかばかり心配していました。でも本当に考えるべきだったのは、自分にとって大事なものと、絶対に避けたい人生のほうでした。

そこを考えたうえで、それでも自衛隊を離れたいと思うなら、別の道を探せばいい。

世の中は思っていたより広いし、これまで自衛隊でやってきたことが全部無駄になるわけでもありません。

自分にとって大切なものさえ見失わなければ、案外、どうにかなります。

 

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りすまる元へっぽこ陸自幹部
元陸自幹部、現在は民間企業のコンサルタント。30代半ばで自衛隊から転職しました。自衛官の転職、生成AIの実務活用、組織や会社員としてのサバイブ術を、自分自身の失敗や試行錯誤をもとに書いています。